個人事業者が確定申告書を提出する際に「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を
添付した場合の課税について、前回触れました。
今回は総収入金額不算入の規定の適用を受けない場合について、です。
不算入の適用を受けない国庫補助金等の金額は一時所得の収入金額とする、なんですが
事業用資産を取得した時は事業所得の収入金額ではないのでしょうか?
簡単な具体例で対比してみます。 (単位:円)
売上高 :100万
固定資産の取得に支払った金額 :25万
固定資産の取得に対して交付を受けた国庫補助金等の金額:10万
※簡単に考えるために 固定資産の取得価額相当額=当期の減価償却費 とします。
このため課税の繰延の効果は発生しません。
①不算入の適用を受けた場合
事業所得 総収入金額(売上高) 100万
必要経費(減価償却費) 25万-10万= 15万
※不算入の適用を受けたため、補助金等の金額を控除します。
所得金額 100万-15万= 85万
合計所得金額 事業所得のみ 85万
②不算入の適用を受けなかった場合(事業所得の収入に算入するケース)
事業所得 総収入金額(売上高+国庫補助金等の金額)
100万+10万= 110万
必要経費(減価償却費) 25万
所得金額 110万-25万= 85万
合計所得金額 事業所得のみ 85万
③不算入の適用を受けなかった場合(一時所得の収入に算入するケース)
事業所得 総収入金額(売上高) 100万
必要経費(減価償却費) 25万
所得金額 100万-25万= 75万
一時所得 総収入金額 10万
収入を得るために支出した金額 0
差引金額 10万-0= 10万
特別控除額(差引金額と50万のうち小さい額) 10万
所得金額 10万-10万= 0
合計所得金額 事業所得 75万 + 一時所得 0 = 75万
以上より不算入の適用を受けず、補助金等の金額は一時所得として申告するのが有利になります。
ここからは個人的な意見です。
前回触れましたが、この規定により補助金等の交付を受けた年の課税が繰り延べられます。
不算入の適用を受けるか受けないかは、課税の繰延を受けるか受けないかで判断し、
不算入の適用を受けない場合は②の様に国庫補助金等の金額は事業所得の収入金額に
算入するのが、課税の公平性を保つ意味からも妥当なのかな、と思います。
実際のところは、③を適用したいお客様には、同じ③の立場を取りますね。
参考:所得税法第42条第1項、同条第3項、同条第5項
所得税法施行令第90条、所得税基本通達34-1(9)
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